山羊犬

そういえば、温めておった話があった（挨拶

過日、朝っぱらから夕方まで取材が目白押しで、陽が暮れたら暮れたで、後日の撮影の打ち合わせがみっちり入っておって、腐敗はクタクタになっておった故、少し良い温泉でも憑かろうと、讃岐の奥座敷ってのがキャッチフレーズの温泉に逝くことにした。

腐敗家の家人が出払うとき、ぽりさんはお庭に放たれるのが常である。しかしながら、此処最近冷えてきたこともあり、トイレが完璧に済んでおるのを条件に、居間に放り込んでから出掛けることが多かった。

と、冷えたのが原因のように記したが、既に夏より灼熱のお庭に放牧せず、エアコンの効いた居間に放り込んでおった。
最初の頃は、数分で帰宅する程度だったが、何も悪さをしないことが徐々に明らかになり、1時間、3時間と長時間の放置でも何もしないことが判明したのである。

若い頃は、腐管理人らが熟睡しておるのを見計らって、台所に闖入しては、カボチャを半個平らげたり、天麩羅を敷いておったキッチンペーパーを全部喰ったり、薬箱を荒らしてナロンエースを全部喰ってフラフラしてたり、何かとやらかしておったのに、加齢の影響であろうか。

逞しくなったものだ（ワッケイン風味）。

居間にて1匹で過ごす時間の記録を次々と打ち立るぽりさんを見、腐管理人はすっかり油断しておったのである。

過日も居間に放り込んで出掛けてしまった。
その日は比較的早々に引き上げる予定だったのに、飯を喰って帰宅したのが拙かった。3時間少々経過して帰宅し、居間を覗き込むと白いのが所々に点在しておった。手に取って見るとぽりさんがクチャクチャして喰い残した紙切れであった。

久々にやらかしおったな。で、今日は何を喰ったのかね。

ナチの将校が尋問するように、ぽりさんのアゴをクイッと持ち上げた。勿論返事は無い。ただ、こりゃぁ、ご主人、めっちゃ怒ってるわー。って顔をしておった。

雑誌では無さそうだし、文庫本の類でも無さそうだった。真っ白な紙切れである。コピー用紙かと思いながら、喰い残した紙切れを広げると、DQ9攻略サイトを出力したものだった。

ちょっ、おまっ

慌てて、居間に置いておったはずのDQ9攻略プリントを探すが、やっぱり無い。何処にも無い。無いったら無い。

とはいえ、殆ど攻略が完了した箇所を記したモノだったので、まぁ仕方があるまい。と矛を収めた。そもそもこの時点でぽりさんを叱ったところで、ぽりさんは何を叱られておるのかサッパリ認識しておらんのだ。犬を叱るなら、何かをやらかして4秒以内に叱らねばならない。4秒以内に叱り、且つ因果関係がハッキリしておれば一発で二度と同じ過ちを犯さないので、犬の躾に手を焼いておる諸君は参考にすると良い。

明日はバリウム呑んだ後の糞みたいに白いのが出てくるだろうな。と思いつつ、それからはいつも通りに接してやり、やがて床に憑いた。腐敗の背中にドカッともたれ、ぽりさんは早くも寝息を響かせておった。寝息はこう聞こえてくるようだった。

あんなご主人。バラモスは氷のフォースに弱いから。


そりゃ暗記パンだ、お前。