【私はあなたであった。あなたは私になるだろう】
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↑コマ送り風味で挨拶
ぽりさんの話である。まったく此処暫く、ぽりさんにとっても(肉体面)、飼い主にとっても(金銭面)厄災が続いておる。
先日来、顔面神経痛に冒されたり、エリープスと呼称される良性の腫瘍が口内に出来たり、何かと動物病院のお世話になっておるのである。あのな、いっくら飼い主が女医さんに会いたがっておるとはいえ、
こんなことで、何万も注ぎ込ますな(正確には貢がすな)。
それで、エリープスが良性と判明し、取り敢えず安心しておった矢先。彼の腫瘍の存在を知って以来、再発しておっては大変と、定期的に口内を隈無く見ておったら、全く別の箇所にヘンな腫れ物が出来ておった。犬の口内も人間と同様、左右対称に出来上がっておる都合上、それが異物であることは、素人たる腐敗でも一発で検知出来たのである。
非常に重苦しい空気が漂った。というのも、口内にて発生する腫瘍は悪性である確率が高いといった記事を雑誌で読んだことがあったからである。
今度こそ、どえらい手術(正確にはどえらい出費)を強いられるのか。
それでも、このまま放置しておったら、例え良性でも喉を詰まらせ、飯が喰えないどころか、窒息するほど巨大化する公算すら予見出来た故、いつもの御殿医の元に向かった。因みにその日も女医さんは非番であった。
早速、所見させると御殿医はいつもより口少なであった。直感した。これはひょっとしてガチで残念かも知れぬ。とはいえ、この所見のみでは良悪の見立ては難しいとのことだった。さらに御殿医は続けた。
当院ではCTが無いので、CTのある病院で癌を専門にやっている医者をご紹介いたします。
犬でもCTを撮るのか。腐敗ですらやったことないぞ。
既に銀週間を目前に控え、本格的な治療は何時になるか分からないが、ともあれ紹介状を彼の医者に寄越す便宜を図らせ、連休の前日、癌専門医の元に向かった。
随分、でかい病院であった。流石癌専門。などと感心しつつ入り口を潜ると、御殿医のところとは別世界だった。人間の病院に例えて言うなら、御殿医は町医者で、癌専門医は大学病院。奥の部屋では手術をやっておるようで、心電図とか脈を計測する機器がチカチカしておった。なんでも急患らしい。急かしても仕方ない故、受付を済ませ、暫く待つことにした。
半時間ほど経過したであろうか。ようやく呼び出され、診察室に入ると、頼りなさそうな医者がニコニコしておった。此奴が癌専門医なのか。何ともガッカリさせやがる風貌。どっちかといえばパン屋のようではないか。
それで名札を見た。癌専門医(院長)ではなかった。ま、ま、良い。どうせ今日はCTの予約だけだ。と思い、どんな段取りになるか耳を澄ませておったら、
今日はどうされましたか?
おいちょっと待て。どうされたもこうされたもあるか。受付で要件を伝えたのに、君は何も聞いておらんのか。
あ、申し訳ございません。
もう良い。もう一度言う。だがその前に御殿医からの紹介状を君は読んでいないのかね。
!
パン屋は慌てた顔をして姿を消した。
それから、待てども待てども、姿を現さぬ。と、思いきや、奥の部屋でパン屋とその他の看護師が、わー、きゃー言いながら、紹介状を探す姿を確認した。
それから再び半時間ほど経過。
痺れを切らした腐敗は、診察室を出て受付の看護師にもう帰る。但し御殿医に紹介したもらった関係上、もう来ないことはないが、今日のところは出直す。とドスを効かせて吐いたのである。さらに、
タダでさえ、ガチで残念な病気かも知れぬとナーバスになっておるのに、お前らは一体何をやっておるのか。
↑これも言いそうになったが、流石に呑み込んだ。
受付の看護師は蒼白になって姿を消した。それから直ぐに女医(美人)と格上らしき看護師がやって来た。
本当に申し訳ございません。院長が此処数日出張のままなので。本当に申し訳ございません。
分かった。もう暫く待つ。それでも出なければ・・・
続けようとしたら、奥から別の看護師がやって来た。紹介する旨を綴ったメールを発見した模様だった。それを一読した女医(美人)は、もう少々お待ちください。と告げ、奥の部屋に吸い込まれるように消えて逝った。
パン屋が待つ診察室に戻る気が無かった腐敗は、待合室にて腰を据えた。少し経って女医(別の美人)がやって来た。この段になって、診察室にお越しください。などと空気読めてない言は無かった。女医(別の美人)は深々と頭を下げた。腐敗も大人げなかったと気憑いた。間違っても美人だから許したのではない。とはいえ、今後何かと有利に事を運ぶために謝りはしなかった。
それからは良い調子で話が進み、CTを撮る日取りやら、様々な注意点やリスクの説明を受けた。先日も御殿医のところで麻酔を受けたのに、此処まで懇切丁寧な説明はなかったし、麻酔をかける前に麻酔に耐性があるかの検査までするようである。流石癌専門。
流石美人。
とはいえ、逆に考えれば、この病院では、かつて麻酔で事故をやらかしたかも知れぬ。誤解を与えては残念故、珍しく丁寧に解説しておくと、女医(別の美人)が言うには、検査の結果、麻酔に耐性があると診断しても、10000頭に1頭の割合で、ショック死する公算があり、これがリスクとのこと。この病院では、10000頭に1頭の悲劇が起こったのかも知れぬ。それで、此処まで入念に説明しておるのかも知れぬ。
しかし、全身麻酔が出来なければ、手術どころかCTの撮影すら出来ぬので、リスクは承知で女医(別の美人)の説明に同意した。CTの撮影と、病理検査用のサンプル抽出は連休明けと相成った。これらを基に腫瘍の良悪を診断し、何処まで切除するのか、或いは放置か、さらに放射線治療か、抗ガン剤を投与するのか、あらゆる対策が検討される。もう人間顔負けである。
後半に続く(キートン山田風に)。
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